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2008年 03月 04日 ( 1 )

 

秋田内陸線

 NHKアーカイブスで視聴した昭和43年放送の「新日本紀行、羽後・西馬音内」は、田園の中を走る雄勝鉄道の木造・ハコ型電車が西馬音内駅に到着する映像で始まりました。水田は圃場整備前で、道路も砂利道。懐かしい光景でした。それから5年後、圃場整備に合わせて道路改良と舗装が進み、電車は廃止になっています。町の様子が大きく変わる時代の象徴でした。

 その番組を見て思い出したのが、秋田内陸縦貫鉄道の「秋田内陸線」です。北秋田市の鷹巣駅から仙北市の角館駅を結ぶ、全長94.2kmの鉄道は今、存続の危機にあります。1989年(平成元年)4月1日に、それまで未開業区間だった比立内(旧阿仁町)と松葉(旧西木村)間、29.0kmが開業して、全線開通。当時、年間で100万人を超えていた乗車人員が、06年には半分の50万人に激減。赤字を補填してきた自治体の財政事情が窮屈になり、今後は線路などの施設維持と改修費の増加が見込まれることから、秋田県の寺田知事は2月県議会で一般質問に答え、「現状では(存続の)可能性として厳しいのではないか。これ以上は結論を先延ばしにできない」と述べ、今年の夏まで結論を出すとする考えに変わりがないことを表明しました。

 しかし、利用者が少なくなったから「バスに転換する」のは単純すぎる結論です。バスとて採算がとれずに、県内各地で路線の廃止が進んでいるのが現実ですから、視点を変えて鉄路を活かす方策を探らなければなりません。特に秋田内陸線の場合は沿線の人口減少が著しく、道路整備が進んで車社会になっているとしても、四季の自然美が豊かな地域を縦貫する鉄路。阿仁合線と角館線に分かれたままで行止まりの鉄路ならまだしも、鷹巣と角館が結ばれたことで存在感がクローズアップされる秋田県の財産です。鉄路はいったん廃止されれば元へ戻ることは不可能ですから、沿線住民の足を確保する目的とともに、秋田内陸線の特色と魅力を地域振興に発揮する取り組みにもっともっと知恵を絞るべきでしょう。通勤や通学の利用者が大きく減る中で、観光客など地元以外の利用者が(横ばいながらも)確保されているところに、突破口がある感じがします。

 沿線には豊かな伝統や文化、自然が残されており、これらの宝物と鉄路を結びつけた取り組みが十分に行われてきたのか。高速交通体系が整備されても、秋田県の観光は角館など一部の地域を除いて、十和田や男鹿、既存の温泉地がジリ貧状態になっているのは何故か。「財政が厳しい」と、予算を何でもかんでもカットしたことで、伸びる可能性のある地域(地場産業)の芽を摘んでいないか・・・・・など、今までの検証も必要でしょう。

 もっとも、ニュースなどで知る範囲では、地元の自治体や市民団体の皆さんは存続へ向けて様々な努力をしているようですが、県が鉄路を活かすための対策に努力しているようには感じられません。秋田内陸線を過疎化が著しいこの地域の救世主として位置づけ、豊かな自然を活かした交流産業を創りだす知恵を絞りましょう。この際は今期限りでの引退を表明し、残任期間が1年となった寺田知事には(夏までにという)結論を先送りしていただいて、新しい執行部で考えませんか。

 昭和48年、雄勝鉄道の廃止に反対運動はありませんでした。しかしながら、今日の秋田内陸線は存在価値が全く違う、秋田県の貴重な地域資源です。このまま廃止では「もったいない」。700億円を投じて完成した秋田市の自動車専用地下道路も、確かに便利です。県民の声に応えて新しいものを作ることも必要ですが、先人が努力してきたものを活かすことも、次の世代の責任です。

by shouichiro_sato | 2008-03-04 22:36 | 秋田県 | Comments(0)