「阿部忠吉」遺作展
2007年 10月 17日
阿部さんは湯沢高校を卒業後に上京して就職するものの、26歳の時に脱サラして京都府の染色作家・寺岡岳保さんと一子さん、出納徳雄さんの各先生に師事し、京友禅を修行。ろうけつ染めの作家として活躍しました。その後、故郷の羽後町の山に似ている茨城県笠間市の芸術村に移り、「水戸黒染め」益子家12代・益子栄寿さんに師事して、研究と創意工夫を重ねながら口伝で技を受け継ぎました。
「水戸黒染め」とは旧水戸藩の藩主や家臣たちの黒紋付羽織だけに用いられてきた伝統的な染物でしたが、阿部さんの京友禅の染色技術や独自に研究した技法が融和し、新たな世界を作り出しました。「伝統とは、伝えられつつ進化・発展し、その世界に生きているもの」という阿部さんの残された言葉も印象的です。
羽後町では数年前、旧長谷山邸で故郷に錦を飾る「展覧会」を行なっていますが、今回の遺作展は小・中・高校時代の同期生8人が実行委員会を組織して、着物や帯、タペストリー、屏風、ネクタイ、色紙など90点余りを集めて展示しています。会場では阿部さんが作業に打ち込んでいる姿をとらえた写真や生前のビデオ(TV番組)も放映されており、所狭しと並ぶ作品の迫力に圧倒されるほどでした。
阿部さんのすばらしい技法に感動するとともに、急逝されたことが惜しまれてなりません。
by shouichiro_sato | 2007-10-17 20:34 | 羽後町 | Comments(0)