蟻地獄に陥った「年金問題」
2007年 06月 07日
社会保険庁の年金記録が5000万件も宙に浮いている問題で、さらに1430万件の厚生年金の記録がコンピューターに入力されず、未統合になっていることがわかりました。問題の記録は1950年代前半までのものとされていますが、その対象者の大半は現在の高齢者。だとすれば年金額が減ったりしていることも考えられ、これまた重大な当局の過失です。
今夜7時30分からのNHKクローズアップ現代では、「宙に浮いた年金記録・どうする5000万件」のタイトルで、厚生労働事務次官の辻哲夫さんをスタジオに招き、政府の今後の対応や救済策について、国谷裕子キャスターが鋭く追及していました。辻事務次官は冒頭から番組の最後まで、「反省している」の繰り返し。杓子定規に対応してきた役所への国民の怒りを目の当たりにして、弁明の余地もありませんでした。何故これまで放置されてきたのか?。年金への加入は強制であり、最近では保険料の納入率が低下していることから督促や徴収に膨大な労力をかけています。しかしながら、支給に当たっては「申請主義」を前面に出して、加入者からの申し出があるまで「知らんぷり」。これでは何処かの生命保険会社と同じで、実態が明らかになればなるほど「年金制度への信頼は崩壊してきた」と言っても過言ではありません。
政府は5000万件の記録の照合を今後1年間で行なうとしていますが、実際に可能なのかわかりません。参議院議員選挙を前にして国民の不安をこれ以上増幅させないために必死になっていることは理解できますが、以前に年金事務を担当した市町村では5年前までの記録は既に(国の指導で)廃棄処分にしており、領収証を持っている国民は少ないでしょうから、どれだけ正確に照合できるか疑問です。
その上、膨大な経費(コンピューターシステムや人件費)がかかることも予想されます。このことについて柳沢厚生労働大臣は「社会保険庁や厚労省の予算の中で捻出する」と話していましたが、これも勝手な言い分です。自らの失態を認めるならば、社会保険庁や厚労省の職員は「自腹で後始末をしなさい」と言いたいくらいです。民間では倒産などの現実に合うと、資産処分などの厳しい対応が当たり前なのに、これだけ国民に不信感を募らせ迷惑をかけているのですから、担当してきた役所や職員は給与や退職金を返上してでも「公務員としての職責」を果たすべきです。
政府・与党は「現実的に解決する方向に向かうことが重要だ」という姿勢で押し通そうとしていますが、強引になればなるほど国民の不信感は拡大しそうです。それにしても、今までこの問題について「知らんぷり」してきた社会保険庁の役人は、一体どんな気持でいるのでしょう。退職金をもらって何処かに天下りし、「見ざる、言わざる、聞かざる」ではあまりにも無責任です。
by shouichiro_sato | 2007-06-07 23:02 | 国政・時事 | Comments(0)