介護ビジネス
2007年 06月 06日
高齢化社会を迎えて需要が伸びてきた介護サービスは、平成12年度に「介護保険制度」が始まったこともあり、全国的に普及しました。それまでの老人福祉の政策は自治体の責任でサービスが提供されていたのですが、同制度のスタートにより民間事業者も数多く参入し、「介護ビジネス」は新たな産業として定着しつつあります。その業界の最大手が「コムスン」で、新聞やテレビの派手な広告で注目を集めて急成長。本社は東京都港区の六本木ヒルズ内にあり、全国で事業を展開しています。秋田県内でも秋田市や男鹿市、井川町など8ヶ所に事業所があります。
「コムスン」は、実際は雇っていないホームヘルパーが働いているように見せかけ、介護事業者の指定を不正に受けていたほか、介護報酬も受け取っていました。厚労省は昨年4月施行の改正介護保険法により、不正行為のある事業者については5年にわたり指定・更新を認めないという規定を初めて適用し、厳しく処分しました。この背景には、「介護サービス」という高齢化社会を支える重要なシステムに、利益を追求する「ビジネス感覚」の事業者の参入が進んで介護給付費が急増していることから、最大手の企業でも見過ごす訳にはいかないと判断したのでしょう。当然の決定です。
これにより「コムスン」は全国2081事業所の内、最終的には426事業所にまで縮小されることになります。企業倫理を欠いた全国展開のツケは大きなものとなりました。ただし、来年4月までは時間的な余裕もあり、都道府県では利用者に影響が及ばない対策(新しい事業者の指定など)を速急に確立しなければなりません。
それにしても医療や介護、福祉という公共性の高い分野に、「民間活力の導入」という掛け声の下に(ややもすれば)「利益追求型」の企業が参入し、あちこちで不正請求の問題が発生していることから、その経費の大半を公的制度の国民健康保険や介護保険等から支出していることを思うと、監視の目をさらに厳しくすることが必要です。
by shouichiro_sato | 2007-06-06 22:23 | 社会・話題 | Comments(0)