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山形新幹線の車窓から

 秋田新幹線が開業して10年が経過し、秋田県と首都圏を結ぶ大動脈となりました。その分、かつての幹線であった奥羽本線を利用することもなく、お隣の山形県の様子を知る機会も少なくなっていましたので、一昨日ときょう、岐阜までの往復に新庄駅から山形新幹線を利用してみました。

 鳥海山や月山、蔵王連邦を眺めながらゆく早春の山形路は、高畠町のキャッチフレーズである「まほろばの里」のイメージそのもので、車窓の景色に心が穏やかになってくる想いでした。

 ただ、上山温泉を過ぎてから赤湯駅の手前の電車内で、一瞬目を奪われるものがありました。この路線を利用したことのある人なら誰でもが感心し、山形県人の勤勉さを実感する急斜面の葡萄園の光景が変わっているのです。それは、4~5年前の様子と違っていました。東京へ向かっているときは電車は坂道を下っていきますので、はっきりとは確認できませんでしたが、(気になっていたので)帰りには赤湯駅辺りから目を凝らして左右の状況を見てきたところ、かつては山一面に葡萄棚があり、この季節にはビニールの覆いが眩しいばかりだったのに、約3分の1以上が荒廃しているのです。崩壊している棚や切られた株もあり、既に草や雑木が生い茂ったところもありました。

 確かに、急斜面での仕事は重労働で、後継者もいなくなれば已むを得ないのかもしれませんが、「フルーツ王国・山形」としては寂しい状況です。その後も、村山から大石田あたりで車窓を見ていると、特産のスイカの定植準備の真最中でしたが、畑に見えるのは年配の人ばかり。若い人の姿が見えません。農業の現場から若い人が消えているのは秋田県ばかりではありませんでした。

 農業・農村の「水と空気、美しい環境」を守る役割が重要視されても、現場の担い手がいなくなっては国土の荒廃は進むばかりです。折りしもきょう、秋田市では全県の市町村や農業団体の関係者が集まって、農村環境を守る活動を支援する「農地・水・環境保全向上」のための地域協議会が設立されたニュースがありました。とかくこの種の協議会は補助金を受ける窓口になるために組織される傾向にありますが、疲弊する農業・農村の現状を打開するためには、担い手が営農意欲を持てる施策を展開しなければなりません。山形新幹線で見た光景と重ね合わせると、補助金をもらうためだけの集落営農組織の設立や協議会への参加では、「秋田県農業の展望は開けないのではないか」と考えるのです。

by shouichiro_sato | 2007-04-12 22:30 | 産業振興 | Comments(0)

 

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