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県議選を前にして

 前回の全国統一地方選挙で、こんな事件があったとは驚きでした。

 2003年4月に行われた鹿児島県議会議員選挙で、公職選挙法違反(買収・被買収)の罪に問われた12人の被告に対して、鹿児島地方裁判所は今月23日、全員に無罪の判決を言い渡しました。事件は志布志市のわずか7世帯しかない集落で、同年2月から4回の会合が開かれて191万円のお金が配られたというものでした。厳しい取調べのなかで自白した6人の供述の信用性や、候補者の当日のアリバイが争点となりましたが、裁判長は「供述は事実と異なり、内容的にも不自然で不合理。アリバイも客観的に信用できる」と判断しました。

 被告らは当初から事実無根だとして無罪を主張していましたが、物的な証拠がないにもかかわらず、自白を強要したりした違法な捜査で、冤罪が築かれていった模様です。長時間の任意聴取や取調官の暴言、弁護士との接見内容を調書化したものもありました。特に、任意で取調べ中の被疑者に、家族の名前と家族が被疑者を諭す内容を書いた紙を強制的に踏ませるなど、常軌を逸脱した捜査が行われています。鹿児島県警はこうした違法な取調べでも民事提訴され、既に敗訴していますから、今回の判決で「全面敗北」。弁明の余地もなく、溝手国家公安委員長も「反省」のことばを述べています。

 結局、事件はでっち上げによるものでしょうが、4年間に被った被告の皆さんの苦しみは無罪になったからといって癒されるものではありません。鹿児島県警本部長は21日に、被告と県民に謝罪し、取調べを行った男性警部補(44歳)を減給10分の1(3ヶ月)にするなど、関係者3人の処分を発表しましたが、濡れぎぬを着せられた皆さんの苦労からすると、何と軽い処分でしょう。

 23日の判決を受けて、日本弁護士連合会は平山正剛・会長の声明を出しました。「本件のような虚偽自白の強要による冤罪や、自白調書の任意性をめぐる審理の長期化を二度と生じさせないためにも、取調べの全過程を録画・録音するという取調べの全過程可視化こそが、必要不可欠であり、それが裁判員裁判の開始時までに実現することを強く求める」というものです。警察といえども「でっち上げ」や「やらせ」は許されません。犯罪には厳しく臨むとしても、慎重な対応がなければ、苦痛から逃避したいがために事実と違う供述をすることがあることを、今回の事件は教えてくれています。

 さて、秋田県議会議員選挙も告示まであと1ヶ月。候補者の顔ぶれも出揃い、日常の政治活動も活発になってきました。ここは、各陣営とも県警本部に迷惑をかけることのないように、正々堂々と論戦を展開して欲しいと思っています。

by shouichiro_sato | 2007-02-27 22:16 | 社会・話題 | Comments(0)  

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