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医療の現場がおかしい?

 痛ましい出来事です。奈良県の妊婦(32歳)が分娩中に意識不明になり、転送先を探したものの19ヶ所(当初18ヶ所と報道されたが1つ増えたことが判明)の病院に受け入れを断られ、1週間後に死亡していたことが明らかになりました。

 奈良県は大阪や京都に隣接しており、県内外の医療環境は充実している所だと思いますが、最初に受け入れを打診した県立医大病院に満床を理由に断られ、それから6時間もかかってようやく大阪府吹田市の病院にたどり着いたと報道されています。どういう事情があったにしろ、緊急医療や高度医療の態勢に不備があったとの批判は避けられないでしょう。ただし、分娩のために入院中だった町立大淀病院でも、頭痛を訴えて意識不明になったのに、コンピューター断層撮影装置(CT)にかけなかった主治医の判断ミスがあったようで、「防げたかもしれない死」であり、残念です。

 ところで、最近の医療現場には異変が起きています。医学部の定員を抑制して医師数を増やさない政策が行われ、そのうえ研修制度が変更されて大学の医局から研修医が少なくなり、地方や小規模病院から医師が大学に引き揚げる。結果、身近な医療機関の医師不足が顕著になってきました。既に救急医療態勢が崩壊したり、一部の診療科を閉鎖するなどの影響が、秋田県でも多く発生しています。「命と健康」を守る大切な仕組みにも、中央と地方との格差がついてきているようで心配です。

 大都市圏や県庁所在地などは医師の充足率も高く、厚生労働省では都道府県が責任を持って態勢を整備するべきだとして、格差を解消する対策には消極的です。しかし、今まで多大な県費をつぎ込んできても、結局は県内に在住する医師が少ないのは何故か。今一度、医師の社会的役割、労働環境、報酬・待遇などについて、オープンな議論が必要ではないでしょうか。一部の大学の入学試験に地域枠を設けても抜本的な解決策になるとは思われませんから、国が責任を持って医療施設や医師の配置についての指針を作り、改善するように誘導するべきです。

 私自身、町立羽後病院の整備と経営に携わった経験からして、今日の医療現場の混乱・困惑は、地方自治体の努力不足によるものではなく、不十分な国の政策が引き起こしたものだと断言しておきます。

by shouichiro_sato | 2006-10-18 21:50 | 社会・話題 | Comments(0)  

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