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結局は、「課題」を背負って発車オーライ?

 県当局にとっては肩の荷が下りた思いでしょうが、考えようによっては新たな荷物を背負うことになった結末でした。

 1年以上前から県政の焦点となっていた、秋田市の南ヶ丘ニュータウンに県立盲、聾、養護学校、小児療育施設などを一体的に整備する「県こども総合支援エリア(仮称)」構想について、県議会は28日の本会議で、関係する用地取得費など約30億2500万円を含む補正予算を賛成多数で可決し、ゴーサインを出しました。住宅用地の造成・販売を手がけている県住宅供給公社の多額の債務問題から端を発した議論は、同構想の実施が「公社の救済策」になるとの寺田知事の見解(本音)が示されたことで、最大会派の自民党が賛成に回り、今ひとつスッキリしないままに決着しました。

 課題の一つは、この事業によって南ヶ丘の北側遊休地(県営住宅用地として2.5haを県が取得済み)の残地、12haがエリア用地として県に譲渡されたとしても、まだ売れ残っている南側180区画を超える広大な分譲地を住宅地として本当に販売できるのか。帳簿上は今回の販売収入で収支のバランスをとり、年度末には職員に退職金を払って全員解雇し、同公社を実質廃止したとしても、それでも残る債務(35億円の負債と42億円余の損失補償)を解消する見通しがあるのか、です。販売できなかった用地を県が購入して利用することで、「県民負担は軽減される」との答弁もありましたが、結局は見通しの甘かった巨大な宅地開発事業を進めたものの、その尻拭いに県費が注入された感じは否めません。失政の責任を曖昧なままにして、知事が言う「渡りに船」の構想を黙認してしまう、「議会の甘さ」も心配です。

 また、エリア構想については施設を利用する皆さんの議論も様々でした。本来は構想策定前に合意されていなければならない基本的な事柄について、今になってもPTAや親の会、関係者に賛否両論の意見があるなど、これからの時代に望ましい施設のあり方についての方向付けも不十分だった気がします。確かに老朽化している現有施設を早期に改築してもらいたい気持ちは十分に理解できます。しかし、障害の程度によっては「施設だけでなく、地域や環境との絆を密接にしていきたい」という強い意見があったにも拘らず、ノーマライゼーションの理念より健常者がいう管理の効率化だけが強調されていたようで、(住宅地として魅力のなかった)南ヶ丘の立地条件・地理的欠陥をどう克服するのかも問題です。

 さらに、この構想実現のための総事業費はおよそ116億円と巨額。県財政が窮屈になり、子育てや教育関係費用に新たな県民負担の検討が始まるなど、財政事情の見通しも不透明です。それと同時に各施設の完成・移転後には、秋田市内に5ヶ所以上もの広い敷地が残りますし、関係する町内には跡地の利活用策も新たな心配になってきます。

 ようやく動き出した「エリア構想」でも、まだまだ課題は積み残したまま。かつて、「大きなシルバーエリア(県内3ヶ所に県が設置した老人福祉施設)より、コンビニ・スタイルの福祉が大事だ」と言っていたのは寺田知事、本人でした。そうした検証もされないままに、会派の事情や自身の選挙を前にして、「已むを得ない」「消極的賛成だ」「反対はできない」といった判断をした県議会ですが、今後の新年度予算審議などを通して、問題解決への努力を続けていく責任があることを明記しておきたいと思います。

by shouichiro_sato | 2006-09-29 13:14 | 秋田県 | Comments(0)  

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