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失われた17年半

 今から19年前の1990年、栃木県足利市で4歳の女児が殺害された「足利事件」で逮捕され、無期懲役が確定し服役していた受刑者・菅家利和さんが17年半ぶりに釈放されました。捜査中に自白を強要され、有力な証拠として採用されたDNA鑑定の結果が間違っていたことが判明したため、東京高等検察庁が決定したものです。再審が開始され、無罪となることが確実です。

失われた17年半_f0081443_21441894.jpg 釈放後に記者会見した菅家さんは、「当時の警察官や検察官は絶対に許せません。間違ったでは済みません。謝って貰いたい。人生を返してもらいたい」と述べています。(写真・NHK「ニュースウォッチ9」から)

 一審公判の途中から無罪を主張し、判決が確定後も弁護団はDNAの再鑑定を求めてきましたが、裁判所は請求を退けてきました。当時のDNA鑑定の精度は800人に一人の割合で符合する人がいるもので、証拠としては疑問視する声もあったのに、何故、当初の鑑定結果に拘ったのか。技術はそれから飛躍的に進歩し、今では4兆7000億人から一人を探し出すほどになり、個人の特定に間違いはないと言われています。

 先月8日に明らかになった弁護側と検察側が推薦する2人の鑑定医が行った再鑑定の結果は、女児の着衣にあった犯人と思われる人の体液と菅家さんのDNAは一致せず、「捜査段階の鑑定は誤りだった」としていました。

 菅家さんは捜査中の取調べが厳しく、「髪を引っ張られたり、足で蹴飛ばされたりした」。「早く話して楽になれ」と、DNA鑑定の結果を突きつけて自白を強要されたとも話しています。菅家さんの失われた17年半の歳月を思うと、検察のみならず当時のDNA鑑定と菅家さんの自白を証拠として無期懲役を言い渡してきた宇都宮地裁・東京高裁、最高裁判所の責任も重いといわざるを得ません。

 最高検察庁はきょう、今後の再審請求に備えて当時のDNA鑑定を採用した事案の証拠品を保管しておくよう、全国の地方検察庁に指示しました。検察も裁判所も今回の出来事を重く受け止めて謙虚に謝罪する必要があります。

 裁判員制度が始まり、取調べのあり方にも可視化を求める声が大きくなる中で、冤罪を無くすためにも菅家さんの取り返しがつかない人生を無駄にしてはなりません。

by shouichiro_sato | 2009-06-04 22:52 | 社会・話題 | Comments(0)  

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