人気ブログランキング | 話題のタグを見る

日銀秋田支店の論文を読んで

 2日に行われた日銀秋田支店の定例記者会見で、高田恭介支店長が秋田県における産業構造改革に向けての一考察として、「航空機・自動車関連産業の育成・集積(Plane&Car Valley秋田)を目指して」という提言を発表したことが報道されていましたので、同支店のホームページに掲載されている論文(執筆者・北原潤、高田恭介両氏)を読んでみました。

 要旨は、①現在の秋田県が抱える最大の問題は人口減少であり、子育て世代(20~49歳)の県外流出を防止するためには県内に新たな産業を育成・集積して、雇用の場を創出することが喫緊の課題である。②産業構造では景気のリード役である製造業のウエイトが低いうえに、IT関連産業が主で業種の広がりに乏しい。③今後育成・集積していく産業としては、経済波及効果・技術波及効果の大きさや世界的な需要動向を勘案すると、「航空機関連産業」と「自動車関連産業」が有望だ。④解決すべき課題や取り組むべき施策は山積しているが、企業、大学・研究機関、行政、金融機関の4者の連携強化が不可欠・・・・・・・・と提言し、世界経済が拡大を続け、日本経済が緩やかながらも拡大軌道にある今こそ、本年を「秋田県産業構造改革元年」と位置づけて、主力のIT関連産業とのシナジー効果が働くような産業構造を作り上げていくことが重要だと結んでいます。

 特に航空機関連産業については、愛知県と岐阜県が全国の5割以上のシェアを占めており、同地域以外に主要集積地がなく先行メリットが享受できる可能性が高いこと。世界的にも需要の見通しが良好なこと。国内では部品の調達先が不足していること。技術波及効果が大きいことをあげ、参入メリットは自動車関連産業に比べても決して小さくないとしています。

 そこで思い出したのが、13年前に初めて岐阜に来ていたときに知った、梶原拓・前岐阜県知事の講演の一部です。「ポスト自動車、自動車の後に来る主流産業は何かとわれわれも研究している。間違いないところが、情報通信と航空宇宙だというふうに思う」(平成6年1月、岐阜県産業人クラブ新春講演会)。それから10数年経った今はどうなのか。興味があったので今日の休みを利用し、早速、各務ヶ原市にある「かがみがはら航空宇宙科学博物館」を訪ねてみました。

 確かに、中京圏域では各務ヶ原市や愛知県小牧市周辺を拠点に川崎重工業などの大手航空機メーカーが立地し、わが国の航空機産業を牽引してきた歴史があります。ただし、軍事転用性が高い産業であるために障壁も多く、YS-11型機が製造されて以来、国産の旅客機は誕生していません。しかしながら最近では、わが国も国際的な共同開発への参入が進み、産業規模が拡大してきたといわれています。事実、米国ボーイング社の新型機「ボーイング787」の機体製造にも参画しており、先月には中部国際空港(セントレア)に、製造された787型機の胴体を丸ごと積み込む巨大な輸送機が試験飛行にやってくるなど、エネルギー効率が良く、技術力に優れた「日本の物づくり」が注目され、にわかに活気がでてきました。

 同博物館でも、この地域からわが国の航空機産業や宇宙開発事業が発展してきたと説明していましたが、その一画には秋田県にあるロケットエンジン実験場も紹介されており、不思議と縁のあることも感じました。 

 秋田県の産業に思い切って新たな分野を導入しない限り、先行きは暗くなるばかりだということは誰もがうすうす分かっていながら、県内からは大胆な提言や行動がなかった中で、今回の日銀秋田支店の論文は県民に希望を与えてくれているような気がします。小手先の振興策でなく、抜本的に秋田の将来を考える政策・取り組みが必要なのです。皆さんも是非、同支店のホームページに掲載されている論文を読んでみてください。お薦めします。

by shouichiro_sato | 2007-02-04 16:49 | 産業振興 | Comments(0)  

<< 大接戦の「愛知県知事選挙」と安倍首相 安倍総理が来県 >>